セキュリティ・弱点
問い合わせフォームの個人情報、クリニックが気をつけたいこと
ホームページの問い合わせフォームや予約フォームには、患者さんのお名前や電話番号、ときには症状まで書き込まれます。便利な一方で、「このフォーム、送られた内容はどこに届いて、誰が見られるのだろう」と改めて聞かれると、すぐには答えられない院長も多いのではないでしょうか。この記事では、フォームで個人情報を受け取るクリニックが確認しておきたい点を、専門用語をかみくだいてご紹介します。
フォームで受け取る情報は、思っている以上に大切なもの
クリニックのフォームには、一般的な会社の問い合わせよりも慎重に扱いたい情報が集まりやすいという特徴があります。お名前、電話番号、メールアドレスといった連絡先に加えて、「どんな症状で受診したいか」「持病や服用中の薬」といった、体に関わる内容が自由記入欄に書かれることも珍しくありません。
体や病気に関わる情報は、知られたくないと感じる方が多い情報です。紙の問診票を受付の机に置きっぱなしにしないのと同じように、フォームで受け取った情報も、届くまでの道のりと届いた後のしまい方の両方に気を配ることが大切です。
なお、個人情報の扱いについて、法律上どこまでの対応が求められるかは、クリニックの規模や情報の種類、使っている仕組みによって変わります。この記事では一般的な考え方と確認のポイントをご紹介しますので、具体的な判断については弁護士などの専門家にご確認ください。
確認したい5つのポイント
フォームを見直す時は、情報が「入力される」「送られる」「届く」「しまわれる」という流れに沿って確認すると分かりやすくなります。主なポイントを表にまとめました。
| ポイント | 確認すること | たとえると |
|---|---|---|
| 鍵マーク(通信の暗号化) | フォームのページのアドレスが「https」で始まり、鍵マークが出ているか | 封筒に入れて送るか、はがきで送るか |
| 入力してもらう項目 | 本当に必要な項目だけになっているか。自由記入欄に詳しい症状を書かせる作りになっていないか | 問診票に不要な質問を載せない |
| 届く先のメール | 誰のメールアドレスに届くか。退職したスタッフや制作会社の担当者に届いていないか | 郵便の届け先が正しいか |
| 自動返信メール | 患者さんに返す確認メールに、入力内容がすべて書き写されていないか | 控えに中身まで書き写して送り返さない |
| 保存される場所 | ホームページの中にも送信内容が保存されていないか。保存されるなら誰が見られるか | 書類をどの棚にしまい、鍵をかけているか |
特に見落としやすいのが、自動返信メールとホームページの中への保存です。自動返信メールに症状などの入力内容がすべて書き写されていると、患者さんのメールが家族と共有されていた場合などに、意図せず内容が伝わってしまうことがあります。返信には「受け付けました」という知らせと、クリニックの連絡先だけを載せる形が落ち着いた選び方です。
また、WordPress(ホームページを更新するための仕組み)のフォーム用のプラグイン(追加機能)の中には、送られた内容をホームページの中に自動で保存するものがあります。保存されたままになっていると、ホームページが書き換えられた時に、その情報まで見られてしまうおそれがあります。保存が必要かどうかを見直し、不要なら保存しない設定にするか、定期的に整理しましょう。
フォームを動かしている部品も古くなる
フォームは見た目が変わらないので、一度作ったらそのままになりがちです。しかし、フォームを動かしているプラグインや、その下で動くPHP(ホームページを動かすためのプログラムの言語)は、弱点が見つかるたびに修正されています。古いまま使い続けていると、そこを入口にホームページが書き換えられたり、フォームが迷惑メールの送信に悪用されたりすることがあります。
2026年10月20日にはPHPの開発チームが深刻な弱点2件の修正を予告し、10月21日にはIPA(情報処理推進機構)が注意喚起を出しました。弱点はWordPressやプラグインではなくPHP本体にあるため、フォームのプラグインを更新していても、PHPが古ければ対象になり得ます。プラグインの弱点の確かめ方はWordPressのプラグインの弱点を確認する方法でご紹介しています。
- フォームのプラグインが、長いあいだ更新されていない
- フォームから身に覚えのない英語の問い合わせが大量に届く
- フォームのページだけ鍵マークが出ていない、または警告が出る
- 送信ボタンを押すとエラーが出る、届いたはずのメールが届かない
こうした様子があれば、フォームの部品やホームページの土台を点検するきっかけです。外から見える範囲の状態は、アドレスを入れるだけで確認できる無料の自動診断でも確かめられます。
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院内で決めておきたい扱い方
フォームの仕組みを整えても、届いた後の扱いが曖昧だと、情報が思わぬところに残ってしまいます。院内で次のような点を決めておくと安心です。
- 受け取る人を決めるフォームの内容が届くメールアドレスを、院内で管理できるものにします。個人のメールアドレスや、退職したスタッフのアドレスに届いていないか確認します。
- 見られる人を絞る届いたメールを読めるのは誰か、パソコンやスマートフォンのどこで読むかを決めます。共用のパソコンなら、メールの画面を開いたままにしない、といった基本も確認します。
- 対応後の扱いを決める問い合わせへの対応が終わった後、メールをいつまで残すか、カルテなど別の記録に移すかを決めます。
- フォームの文面を整えるフォームの近くに、受け取った情報を何に使うか(お問い合わせへの回答のためなど)を書き、プライバシーポリシー(個人情報の扱い方の説明)へのリンクを置きます。
- 迷惑な投稿への備えをする機械による大量の投稿を防ぐ仕組み(画像の文字を入力させる確認など)を入れ、届いたメールに書かれたリンクを不用意に開かないようスタッフで共有します。
フォームに書いてほしくないことは、はっきり伝える
「詳しい症状は来院時にお伺いします」「お急ぎの方はお電話ください」と書き添えておくと、患者さんが必要以上の情報を書き込まずに済みます。緊急の相談がフォームで届いて気づかない、という行き違いを防ぐことにもつながります。
制作会社・保守会社に聞いてみたいこと
フォームの裏側の設定は、ホームページの画面を見ているだけでは分かりません。管理を任せている相手がいる場合は、次のような質問をそのまま投げかけてみてください。答えをメモしておくと、担当者が代わった時の引き継ぎにも役立ちます。
| 聞いてみたいこと | 答えから分かること |
|---|---|
| フォームの内容は、どのメールアドレスに届く設定ですか | 院内以外の人に届いていないか |
| 送られた内容は、ホームページの中にも保存されていますか | 書き換えられた時に見られてしまう情報があるか |
| フォームのプラグインとPHPは、いつ更新しましたか | 部品の古さと、手入れの頻度 |
| 自動返信メールには、何が書かれていますか | 入力内容が書き写されていないか |
| 迷惑な投稿を防ぐ仕組みは入っていますか | フォームが悪用されにくい作りになっているか |
| フォームが動かなくなった時、どう気づける仕組みですか | 問い合わせを取りこぼしていないか |
最後の「動かなくなった時にどう気づけるか」は、意外と見落とされがちです。フォームが壊れていても、送信した患者さんの画面には「送信しました」と出てしまい、クリニックには何も届かないということが起こり得ます。月に一度ほど、スタッフの方が試しに送ってみて、きちんと届くかを確かめるだけでも、取りこぼしに早く気づけます。
制作会社と連絡がつきにくく、こうした質問の答えが返ってこない場合は、制作会社と連絡が取れない時の対処法も参考にしてください。
見直しのためのチェックリスト
最後に、院長・事務長が確認しておきたい点をチェックリストにまとめました。分からない項目があれば、制作会社や保守会社に聞いてみてください。
- フォームのページに鍵マークが出ている(アドレスが「https」で始まる)
- 入力項目が、連絡や予約に必要なものだけになっている
- 詳しい症状は来院時に伺う旨を、フォームの近くに書いている
- 内容が届くメールアドレスが、院内で管理できるものになっている
- 退職者や昔の制作担当者に、フォームの内容が届いていない
- 自動返信メールに、入力内容がそのまま書き写されていない
- ホームページの中に送信内容が保存されていないか、保存されるなら整理している
- フォームのプラグインとPHPが、修正版に更新されている
- プライバシーポリシーがあり、フォームからリンクしている
- 迷惑な投稿を防ぐ仕組みが入っている
Web予約やWeb問診など、外部の仕組みを使っている場合は確認するポイントが少し変わります。Web予約・Web問診を使うクリニックのホームページで確認したいこともあわせてご覧ください。
法律上の責任範囲や、プライバシーポリシーに何を書くべきかといった判断は、弁護士などの専門家にご確認ください。そのうえで、ホームページの側で何を直せばよいかを知りたい場合は、HPドクターの専門家による無料セカンドオピニオンをご利用ください。今の制作会社との契約はそのままで、フォームを含めた今の状態を見立て、手を入れる順番をお伝えします。
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今の制作会社との契約はそのままで、専門家が無料で詳しく確認し、「誰が何を直せばよいか」を制作会社にそのまま渡せる形でお送りします。
無料でセカンドオピニオンを受けるよくあるご質問
鍵マークが出ていれば、フォームは安心ですか?
鍵マークは、入力した内容が送られる途中で読まれにくくする仕組みです。大切な一歩ですが、届いた後のメールの扱いや、ホームページの中への保存、部品の古さは別の問題です。届くまでと届いた後の両方を確認してください。
フォームで症状を書いてもらうのはやめたほうがいいですか?
一概には言えませんが、受診の予約や問い合わせに必要な範囲に絞ると、受け取る側の負担も減ります。「詳しい症状は来院時に伺います」と書き添えるのも一つの方法です。どこまで受け取るかは、運用に合わせてご判断ください。
自動返信メールは止めたほうがいいですか?
受け付けたことが患者さんに伝わるので、自動返信自体は役立ちます。気をつけたいのは中身で、入力内容をすべて書き写さず、受付の知らせとクリニックの連絡先だけにする形がおすすめです。
個人情報保護法でどこまで対応する必要がありますか?
求められる対応は、クリニックの状況や扱う情報によって異なります。この記事では一般的な考え方をご紹介していますので、具体的な判断は弁護士などの専門家にご確認ください。
フォームから英語の迷惑な問い合わせが大量に届きます。
機械による投稿が届いている状態です。投稿を防ぐ仕組みを入れることに加えて、フォームの部品やPHPが古くなっていないかも点検するきっかけにしてください。届いたメールのリンクは開かないようにしましょう。
この記事は、クリニックのホームページの保守を担当する株式会社Canvi「HPドクター」編集部がまとめました。運営会社は、医療法人・医療系企業の営業・採用・教育を支援する「MedLead」も提供しています。
